整形外科が扱う運動器疾患の中には、命にかかわるような疾患は多くありませんが、背骨や関節の痛み、機能障害、変形は生活の質を低下させます。 特に痛みを軽減させることが整形外科の治療の中で非常に大切なことと考えております。
| 1.首の痛み: | 頚椎症,頚椎捻挫(むちうち症)、頚椎椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群など。 |
| 2.肩の痛み: | 肩関節周囲炎(五十肩)、石灰沈着性腱炎、腱板損傷、野球肩、 |
| 肩関節脱臼、上腕骨頸部骨折など。 | |
| 3.肘の痛み: | 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、上腕骨内側上顆炎(野球肘)、 |
| 変形性肘関節症、肘内障、上腕骨顆上骨折など。 | |
| 4.手首、手の痛み: | 腱鞘炎、手根管症候群、橈骨遠位端骨折、ガングリオン、 |
| 関節リウマチ、ばね指、つき指など。 | |
| 5.胸、背中の痛み: | 肋骨骨折、肋間神経痛、変形性脊椎症、側弯症など。 |
| 6.股関節の痛み: | 変形性股関節症、大腿骨頸部骨折、単純性股関節炎、 |
| 大腿骨頭壊死など。 | |
| 7.腰の痛み: | 変形性腰椎症、急性腰痛症(ぎっくり腰)、 |
| 腰椎椎間板ヘルニア、坐骨神経痛、腰部脊椎管狭窄症など。 | |
| 8.膝の痛み: | 変形性膝関節症、半月板損傷、靭帯損傷、Osgood-Schlatter病など |
| 9.足首、足の痛み: | 足関節捻挫、アキレス腱周囲炎、アキレス腱断裂、外反母趾、 |
| 痛風、陥入爪(巻き爪)、足底腱膜炎など。 |
― 頚椎症―
中年以降に好発し、肩こり、頸部痛として発症、時として手のしびれを認める場合があります。
頚椎牽引や温熱療法が有効です。安静のため頚椎カラーを使用することや痛みの軽減のため注射をすることもあります。
― 頚椎捻挫(むちうち症)―
交通事故やケガなどで首を捻挫した状態をいいます。首の痛み、肩コリひどくなると頭痛、めまい、吐き気などを伴います。
早期には安静が大事ですが、一週間以上痛みが改善しない場合は注射治療や理学療法で温熱治療を行ったりします。
― 頚椎椎間板ヘルニア―
肩こり、頸部痛、片側の腕や手の痛み、しびれが主な症状ですが、進行すると手の細かい動作の障害、歩行障害などを認めるようになります。
牽引療法、温熱療法や薬物療法が治療の主体ですが、手術が必要になる場合もあります。
―胸郭出口症候群―
なで肩の若い女性に多い疾患です。首の痛みだけでなく、手のしびれや腕の痛みが特徴的な症状です。
治療には鎮痛剤の投与に加え、症状を悪化させる動作を避けるようにすることが必要です。さらにはストレッチや背中の筋力トレーニングすることも重要です。
―肩関節周囲炎(五十肩)―
40〜60歳代でみられる肩の痛みの代表的な病気です。明らかな原因は不明ですが、症状は肩関節の痛みで始まり、痛みが落ち着くまで人によっては半年以上かかる場合もあります。
また適切に治療しないと肩の拘縮(硬く固まってしまう)を残します。
五十肩の治療の目標はまず痛みをとり、運動療法で肩をよく動かして拘縮を起こさないようにすることです。
鎮痛剤、理学療法以外にヒアルロン酸を肩に注射すると良くなることが多いです。
―石灰沈着性腱炎―
急性に発症し、強い肩の痛み(夜間痛、運動時痛)を認めます。レントゲンにて肩を挙上する腱に石灰を認めます。
石灰を認める場所に注射すると劇的に痛みが改善することが多いようです。
―腱板損傷 ―
加齢、仕事などでの繰り返す肩への刺激、外傷などを原因として発症します。主症状は肩の強い痛み(時に夜間痛)と肩挙上力の低下です。重症になると肩をあげることができなくなります。 治療としてまずは安静と鎮痛剤により炎症を軽減させる必要があります。五十肩と混同して運動療法を行うと炎症を増悪させるので注意が必要です。
―野球肩―
投球動作の繰り返しによって、肩周囲の骨、軟骨、筋肉、腱板などに障害を起こす病態の総称です。
痛みがある時は投球の一時的な中止、ストレッチ、筋力強化訓練などを行います。
―肩関節脱臼―
外傷性脱臼の中でも最も頻度が高く、健側の手で脱臼した腕をささえて来院されることが多いです。
脱臼した肩関節をもとに戻した後、初めて脱臼した方であれば3週程度、再脱臼予防のため固定が必要になります。
―上腕骨頸部骨折―
高齢者が転倒して肩を動かせなくなったら本骨折を考えます。
転位(ズレ)の少ない骨折は三角巾固定のみで良い場合が多いですが、転位が大きな場合や脱臼を伴う場合、ギブス固定や手術が必要なことがあります。
―上腕骨外側上顆炎(テニス肘)―
テニスやゴルフで肘の外側に痛みが生じることがあります。手をしっかり固定する筋肉の付着部の炎症です。ストレッチが大切で肘用のバンドも効果あります。痛みが強いときは注射を行うこともあります。
―上腕骨内側上顆炎(野球肘)―
野球、ゴルフなど腕の使いすぎが原因で起こります。
テニス肘同様、痛みが強い場所への注射が有効です
―変形性肘関節症―
仕事などで肘を酷使した高齢の男性に多く、野球肘の末期像でもあります。
運動時に肘関節の痛みが徐々に現れ、肘の曲げ伸ばしが制限されることも少なくありません。
安静、鎮痛剤の使用のほか、理学療法による温熱治療も効果が高いようです。
―肘内障―
急に小児(2〜6才好発年齢)の手を引っ張ったり、ねじった時に急に泣き出し、腕を動かさなくなったら本症を考えます。
肘の靭帯がずれた状態にあるので、整復(もとにもどす)すれば小児は直ちに肘を曲げるようになり、上肢を使用し始めます。
―上腕骨顆上骨折―
小児で最も頻度の高い骨折のひとつで滑り台、鉄棒、ブランコ、跳び箱などをしていて肘を伸ばして手をついて転倒した時に生じる骨折です。
ギブス固定による治療が原則ですが、転位(ズレ)が大きい場合や合併症(血行障害や神経障害)がある場合、手術が必要になることも少なくありません。
そのため小児の肘のケガはできるだけ早期にレントゲン検査を行う必要があります。
―腱鞘炎―
手首の親指側に痛みや腫れを認めるde Quervain(ドゥ・ケルバン)病が頻度の高い腱鞘炎です。
治療には安静、理学療法のよる温熱治療やステロイドの局所注射も有効です。
―手根管症候群―
手首の手のひら側にある骨と靭帯に囲まれたトンネルのなかを走行する正中神経が圧迫を受け、手のしびれや痛みを起こす病気です。
シビレや痛みが軽度の場合、手首を安静に保つため包帯固定やサポーターをしたり、注射や鎮痛剤、
ビタミンB12剤の内服が有効ですが重症になると手術が必要になる場合があります。
―橈骨遠位端骨折―
手をついて転倒した際、発生します。手首の腫れや変形、運動障害を認めます。
ギブス固定による治療が原則ですが、ズレが大きな場合、手術が必要になることもあります。
―ガングリオンー
手の甲にできることの多い良性の腫瘍です。大きくなると近くの神経を圧迫して痛みを生じることもあります。
注射器でゼリー状の液体を抜くことができ、腫瘍は触れなくなりますが、再発することも少なくありません。
手術的の腫瘍を摘出することもありますが、根が深く手術しても再発する場合があります。
―関節リウマチー
初期症状で多いのは手の指(足の趾)の関節の腫れや痛みです。
また「朝のこわばり」はリウマチに特徴的な症状で、こわばりの持続時間はリウマチの活動性を推定する目安となります。
治療は抗リウマチ剤を主体とした薬物治療とともにリハビリテーションが重要になってきます。
―ばね指―
中年女性の母指、中指、環指に多い腱鞘炎です。症状が進行すると痛みだけでなく、
ばねのように指が引っかかる動きをするために「ばね指」と呼ばれています。
治療は安静と鎮痛剤、ステロイドの注射が有効ですが、効果が低い場合手術が必要になることもあります。
―つき指―
軽症の場合は安静、湿布程度で治癒しますが、指を伸ばす腱が切れたり、
骨折した場合は指を伸ばした状態での固定や手術が必要になる時もあります。
―肋骨骨折―
強打したり、ひねったり、稀ではありますが風邪で咳が多かったときにも起こります。
骨折をした場所を中心に胸の痛みが非常に強く、バストバンドという胸部を固定するバンドが有効です。
―肋間神経痛―
肋骨に沿って痛みを認めます。片側の肋間神経痛では帯状疱疹(ヘルペス)の可能性も考える必要があります。
帯状疱疹には抗ウイルス剤の内服が有効です。
―変形性脊椎症―
骨粗鬆症により、脊椎の圧迫骨折をいくつも起こすと、円背という状態になり体が前傾し、背中の痛みが強くなります。
安静や鎮痛剤、理学療法による温熱治療と平行して、骨粗鬆症の治療が非常に大切です。
―側弯症―
思春期の女子に多く、強い側弯症では背部や腰の痛みだけでなく呼吸障害の原因にもなります。
治療方針はレントゲン検査により角度、骨年齢を測定し決定します。
―変形性腰椎症―
年齢的な変化による慢性腰痛が主症状です。痛みは起床時など動作の開始時に強く、動いているうちに痛みは軽減します。
理学療法や注射治療などにより加療します。
― 急性腰痛症(ぎっくり腰)―
「ギックリ腰」は正式な医学名称ではなく急性腰痛症の俗称です。ぎっくり腰を起こす原因は、いくつかあるのでレントゲンなどの検査を行い、診断をつけて痛みを治療します。多くは、一次的な腰の周囲の筋肉の損傷なので、安静と痛み止めの内服薬等で回復しますが、痛みが極めて強い場合、注射をすることもあります。
―腰椎椎間板ヘルニア―
20〜50歳代に多くみられます。腰の骨と骨の間にある椎間板が後方に突出すると後方にある神経が圧迫され、腰痛だけでなく、殿部や足まで痛みが及んだり、しびれを伴う場合も少なくありません。まずは安静、鎮痛剤を使用し、理学療法も合わせて行います。それでも良くならない場合、定期的に神経ブロックを施行し、神経の炎症を抑えます。手術が必要なのは痛み、しびれが強い場合や定期的通院でも良くならない場合です。
―坐骨神経痛―
坐骨神経痛は一つの病名ではなく、殿部から大腿にかけて痛みを生じる状態です。痛みを起こしている実際の病気の多くは腰椎疾患の腰椎々間板ヘルニア、腰部脊椎管狭窄症、変形性腰椎症などがあります。
―腰部脊柱管狭窄症―
高齢者の腰痛、坐骨神経痛の原因として頻度が高いようです。歩行すると両方の足にしびれや痛みが出現して、座ったり、前かがみで小休止すると軽快して歩けるが、しばらく歩くとまたしびれ、痛みがでるのが特徴です。
治療は鎮痛剤、血流改善剤、理学療法のほか神経ブロックが有効なことも多いようです。
―変形性股関節症―
成人の股関節の病気でもっとも高頻度です。股関節の痛み、歩行障害、股関節の動きの制限が主な症状です。
治療は消炎鎮痛剤(多用は禁)、体重のコントロール、筋力訓練などが必要になってきます。しかし進行すると手術が必要になる場合が多いようです。
―大腿骨頸部骨折―
高齢の方が転倒したら、まずこの骨折を考えます。
重症の合併症がなければ、可能な限り早期離床のため手術を考えます。
―単純性股関節炎―
小児の股関節痛の最も多い原因です。股関節だけでなく、大腿部から膝にかけての痛みを訴えることも少なくありません。
安静により痛みは軽減します。
―大腿骨頭壊死―
ステロイド剤の長期間使用やアルコール多飲歴が壊死発生に深く関連しているといわれております。股関節痛で発症することが多く、進行すると股関節の動きの制限を認めるようになります。
壊死の範囲が狭い例や体重がかからない非荷重部に壊死が存在する例では、日常生活における活動性を若干制限し経過をみますが、
壊死の範囲が広い例や荷重部に壊死が存在する場合は手術が必要になることが多いようです。
―変形性膝関節症―
中年以降の女性に良く起こる膝の痛みです。日本人は関節の内側が傷害されやすく、ひどくなるとO脚になります。鎮痛剤やヒアルロン酸の注射が有効です。
―半月板損傷―
10〜20才代の若年者ではスポーツ外傷、中高年では年齢による変化がでている半月板に軽い外傷が加わっただけで損傷する場合もあります。
MRIで診断は容易です。 治療は関節鏡視下に半月板を切除したり、縫合したりします。
―靭帯損傷―
骨折がなくても簡単に捻挫と片付けず、内側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯などの損傷を考えなければなりません。
治療は不安定性や損傷靭帯、今後のスポーツ生活などより装具装着や関節鏡を使った手術など治療方針もかわってきます。
―Osgood-Schlatter病―
スポーツによる使いすぎから発症することも多く、脛骨粗面と呼ばれる膝の前面、下の部分の運動時痛、膨隆を認めます。
スポーツ活動の制限(または禁止)、ストレッチ、鎮痛剤などで症状は改善することが多いようです。
―足関節捻挫―
足首は捻挫しやすい関節です。特に内側にひねり、外側にくるぶしの痛みや腫れを認める場合が多いです。
初期には局所の冷却、圧迫包帯、患肢の挙上が有効です。重症例では関節の不安定性を残すこともあるのでテーピングやギブス固定が必要になることもあります。
―アキレス腱周囲炎―
使い過ぎにより足首の後方のアキレス腱の周囲に痛みや腫れが出現し、時として歩行に支障をきたすこともあります。
安静、鎮痛剤、理学療法により加療します。
―アキレス腱断裂―
以前は運動会シーズンに男性に多く発生しておりましたが、近年の全国的な女性のスポーツ参加によって女性に増加傾向がみられます。「後ろから蹴られた」「後ろからボールをぶつけられた」といった訴えで来院する方が多くいらっしゃいます。
ギブスや装具による保存的治療、早期の回復を望む方には手術による健縫合術が行われます。
―外反母趾―
圧倒的に女性に多く、先の尖ったハイヒールなど靴や体重増加、筋力低下などが原因として考えられます。母趾の付け根の関節の痛み、変形が強くなると母趾と第2趾が重なり胼胝(タコ)を形成したりします。
治療は装具を使用したり、足指の運動をすることにより進行をある程度止めることができますが、根本的な治療は手術が必要になることもあります。
―痛風―
中年の男性に多く、片側の母趾の付け根の関節の強い痛み、腫れが特徴的な症状です。膝や足首の関節が痛むこともあります。
消炎鎮痛剤により痛みをとった後、食事療法、高くなった尿酸値を下げる薬の使用を考えます。
―陥入爪(巻き爪)―
ひどくなると皮膚を傷つけ菌が入り化膿し抗生物質が必要になる場合もあります。爪の一部を切除したり、ワイヤーで矯正する治療もありますが、再発したり不確実で局所麻酔により根治的な手術する方法が一番有効です。(簡単な手術です)当院でも手術をすることは可能です。
―足底腱膜炎―
足の裏のアーチを支える足底腱膜に炎症を起こし、かかとの内側が痛み歩きにくくなります。
レントゲンでかかとの骨に骨棘(こつきょく)と呼ばれる小さな骨の突起をみとめることもあります。
治療は痛みを和らげる薬、足底板(つちふまずを支えるクッション)を使用したり、炎症をおさえる薬を注射することもあります。